計測QアンドA



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 Q。超音波とは何ですか?

空気の振動で、耳に聞こえる範囲(30Hz〜20kHz)を音波と呼びます。
実際ほとんどの人は100〜13,000Hzくらいしか聞こえませんが、聞こえないような高い周
波数の音波を超音波と呼びます。犬は20kHzでも聞こえますし、ネコでは40kH位は聞こえま
す。
空気は気体ですが、振動は空気中だけでなく、気体、液体、個体、でも伝搬します。液体、個
体中の振動を聞くことは困難ですが、伝搬する媒質によらず、聞こえないような20kHz以上の
周波数の振動は、超音波と称しています。


Q。弾性波、AEという言葉も聞きますが、説明して下さい?

固体をハンマーなどで打撃したとき、弾性体であれば反発して振動し、振動した波が伝搬して
いきます、発生した周波数によらず弾性波と呼ぶことが多く、周波数の高い波は超音波と同じ
です。
機械的打撃によって発生する振動波は打撃速度が小さいため、発生する周波数が低く、
20kHz以下の、振動、および、聞こえる範囲のものを弾性波と称しています。
つまり、弾性波とは、固体を打撃したときに発生する周波数の低い波と言えます。

AEとは(Acoustic emission)音響放射の頭文字です。
棒が折れたり、ひびが入ったりするときに発生する音響の発生を意味します。
発生した振動をAE波と呼んだりします。

用語のまとめ。
@超音波は、周波数による分類で、聞こえないほど高い周波数の振動。
A弾性波は、発生手法(固体を打撃時に発生)による振動。
BAE波は、発生状態(破壊により自然発生)による振動。

これらの生まれと、育ちの違う用語が混在して使用されることがあるため混乱しますが、用語
の定義が明確でなく、統一されていません。


Q。超音波を発生させる、送信パルスの方式について説明してください。

大きく2種類に分類できます。
バースト波とインパルスです。インパルスにはスクエアーパルス(矩形波)とスパイクパルスが
用いられていますが、スパイクパルスは真空管時代では主流でしたが、現在では制御しやす
いスクエアーパルスが主流となっています。

       @スクエアーパルス               Aスパイクパルス
















   Bサイン波バーストパルス         C矩形波バーストパルス          D




















@は探傷機や医療用の超音波断層写真装置に使用されています。
広帯域の周波数成分を含んでおり、距離方向の分解能の高い計測に向いています。
Aはコンデンサーにチャージした電気エネルギーを放電させるもので、高電圧が容易に得られ
ますが、パルスの幅の制御ができないため、現在では特殊用途に限られます。
BCDはバースト波の例です。
連続波の一部を一定の時間だけ切り出したもので、潜水艦の探知ソナーから、交通量調査
センサーまで、多種多様な用途に利用されています。
パワー、周波数、距離方向分解能を、目的に応じて制御できるのが大きな特徴です。
ロックボルト長さ測定器には、このバースト波による送信パルスが使用されています。


Q。接触媒質が使用されている理由は何ですか?

探触子と鋼材などの接触面に空気層があると超音波が激減します。
対策方法は空気層をなくすことですが、接触面の凹凸を埋めて接触させるのに最適な液体を
用います。水、油で良いのですが、流れ落ちないようにゼリー状の物がエコーゼリーと称して市
販されています。粘度の高いペースト状の物であれば特定する必要はありません、ただし、安
全なものに限ります(グリース、ワセリン、グリセリンペースト、水ガラス、流動パラフィン)
が使用されますが、油性より水溶性の方が付着したものの処理が簡単です。



Q。超音波パルス反射法での長さ計測精度を教えてください。

長さ計測原理は間接測定であることを認識する必要があります、メジャーで測る直接法ではあ
りません。計測値は反射してきた超音波の時間です、従って、伝搬媒体の音速が分かってい
ないと長さ計測ができません。言い換えれば、時間計測精度と、音速設定精度が長さ計測精
度に大きく関わってきます。
ロックボルト(鋼材)に限定して考えますと、縦波の音速は5700m±200mと考えて間違いあ
りません、材質の成分、熱処理、形状により変化します。
複雑になるので説明いたしませんが、形状にもよるということは注意して下さい。
誤差要素は次の通りです。
@ボルト先端形状による誤差。
ボルト先端が、剣先である場合、円錐部分約20mmのどの部分での反射波か確定しません。
A仕上がり公差による誤差。
ボルト長さは規定された長さより20mm前後長く製造されています。
B超音波パルス長さによる誤差。
5MHzの超音波の1波長は鋼材中では約1.1mmとなります。探触子の応答特性から考え
て、信号が立ち上がるまで少なくとも5波長は必要ですので、5mmの誤差を見込む必要があ
ります。
総合すると計測誤差は(cm)センチメートルであるといえます。


Q。音速校正の手順と、注意点は何でしょうか?

長さ、材質、形状が同じロックボルトを用意して(打設するものと同じ物)巻き尺で計測する。
超音波により計測し、測長値が同じになる音速を校正音速として用いる。

厳密には、埋設した物はこれより短く出ることになりますが、計測誤差がcmオーダーであるこ
とを認識すれば現実的な校正方法と言えます。

Q。ボルトの先端形状の違いによって検出率が違う理由は?

先端での超音波反射率の違いにより発生します。
超音波は直進し、反射は光の鏡による反射と同様で、反射面と同じ入射角で反射します。
寸切り>剣先>斜め切りで反射率が高く、検出率も反射率と同じになります。


Q。計測で最も注意することは何でしょう?

超音波パルス反射法の基本を忠実に守ることです。

(1)ボルト頭部と探触子との音響結合を確実に行う。
(2)超音波は直進し、反射波も直進して帰ってくることを認識すること。
そのためには
@ボルト頭部を打設方向と垂直に、面を平滑に研磨する。
A探触子の音軸とボルトの打設方向をあわせる。

ボルト端面を研磨するときの注意点は、
@保護めがねの着用
A防塵マスクの着用
B必要かつ充分な照明の確保
C無理のない研磨姿勢の確保
Dボルト横方向からの仕上げ面、垂直の確認

計測時の注意点は、
@空気層が残らないように、エコーゼリーを塗布する。
A探触子を上下左右に少し動かし、音軸をあわせる
探触子を押しつけるのは逆効果、エコーゼリーが逃げる。