日工フォーラム4月号



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日工フォーラム話題の製品で紹介されました

ロックボルト長測定装置
社会インフラの検査、メンテナンスを効率的に。

1.はじめに
最近、山陽新幹線のトンネルで、コンクリートが落下、走行中の列車に衝突。新聞、テレビで話
題となり、一般には聞き慣れないコールドジョイントという言葉や、多人数の人力を用いて、コ
ンクリートをハンマーでたたき落としているニュースは、まだ記憶に残っていると思います。
コンクリートが危ない、(岩波新書616)。今トンネルが危ないのです。現在トンネルや地下空
洞構造の建設には、ほとんどナトム工法が用いられています。ナトム工法とは、トンネルを掘り
進みながら、岩盤、地盤の応力が変化しないうちに、ロックボルトという長尺の鋼材をハリネズ
ミのように打ち込みながら、鋼材の周りをセメントミルクで固めてしまうという 工法です。 ちょう
どでんがくに竹串を打って安定させるのと同じ原理です。今から30年前の標準工法は鋼アー
チ支持工法で、日本の高度成長期に従来工法で多数のトンネルが作られ、耐用寿命を延ば
す方法として、ロックボルトによる補強が有力視されています。新設のトンネルにも完成検査と
して、埋設後での長さ計測が必要性が求められています。また、過去に建設されて相当時間
が経ってしまい、資料の残っていない地下構造体の鋼材長さの計測に有効です。

2.計れるはずが計れない鋼材長さ。
非破壊で、鋼材長さを計測するには、考えられる方法として2通り考えられます。金属探傷機
を長さ計測に応用すること。加速度センサーとインパクトハンマーを用いて、鋼材端面からの
反射パルスを増幅して、伝搬時間を計り、長さを割り出す方法です。
前者は、超音波パルスエコー法、後者は弾性波反射法ということになります。
この方法で鋼材を用意し、計測を行うとかなりの長さの鋼材からでも、信号が得られます。とこ
ろが、鋼材をを埋めてしまうと、信号が帰ってきません。

3.原因追及
高出力のパルサーと、低雑音高感度増幅器の組み合わせ。
他に考えられる要素は超音波の伝搬形態と減衰要素をいかに少なくするかにかかってきま
す。まず発生する波の種類は、縦波、横波、表面波、があり、無拘束鋼材は、ほとんど表面
波、であることが分かりました。
表面を固めた鋼材の中を伝搬して帰ってくる反射波は、縦波のみです。
伝搬減衰を補い、縦波を効率よく発生させて、いかに受信するかが成功の鍵となります。

4.発想の転換で解決。
探触子を共振させて、距離分解能が低下する見返りに、高感度が得られました。
パルスエコー法では、距離分解能を大きくなるように設計するのが通例です。つまり、広帯域
を実現するわけですが、逆に狭帯域に設計したわけです。
そのため、送信方式もインパルスでなく、長さ計測に必要な分解能を維持した、長いバースト
パルスを使用して、探触子もそれ専用に新規開発。
6mの長尺計測を実現いたしました。
さらに、好ましいことに表面波要素がないため、ロックボルトの表面形状に影響されないことも
分かりました。

5.パソコン応用のため後処理が簡単、安価。
報告書作成のため、ファイルをエクセルで読めるようにしてあるため、フラッシュメモリに転送し
て、持ち帰り、デスクトップパソコンで波形も、計測データも容易に報告書作成
できます。もちろん、デジカメで記録した現場写真も張り付けることができるのはパソコンならで
はの、利点といえます。

6.優れた作業性。
探触子をピストル型に、取っ手の中に伝搬媒質塗布容器を収納して、プッシュポンプ式にし
て、受信波形を静止させるフリーズスイッチを引き金状にしました。
これで、超音波計測に付き物の伝搬媒質塗布と、計測動作が片手だけで行えます。
専門の計測技術者でなくても、だれでも、計測できるようになりました。

7.おわりに
拘束された長尺の計測供試体を用意するのはやっかいでしたが、快く承諾していただきまし
た、日本工営中央研究所に感謝いたします。